山﨑豊子氏の本

18 05 2012

久々に読書について書きます。『白い巨塔』『運命の人』など、よくドラマ化される山﨑豊子氏の著書を読みたいと思い、いくつか図書館で借りました。キムタクが主演したドラマ『華麗なる一族』なども読みましたが、大戦がらみの作品が印象に残ってます。シベリア抑留の辛い時代を経て商社マンとして奮闘する『不毛地帯』。終戦間際の満州でソ連から逃げ惑った後、「日本人」の血が流れるとして疎外されながら中国人として生きていく『大地の子』。いずれも虐待や迫害の場面が克明に描写されていて、かなり重い気持ちになりながら読んでいました。強引に家族と引き離される人々、果たしない孤独・・・。その文章の中には、筆者の戦争への憎悪が込められています。読み応えのある、重いテーマの著書ですが、戦争というものの酷さを知る上で、読むべきだと思いました。同じく大戦絡みの長編『二つの祖国』も図書館で見つけ次第、読もうと思います。

凍土と砂漠の、2つの不毛地帯を描いています

二人の父への思いが葛藤する場面も印象的です。





峠と歳月

1 07 2011

幕末時代の志士を採り上げた司馬遼太郎の本2冊です。

この本は超オススメです

「峠」は、長岡藩家老の河井継之助の話。佐幕派でありながら、「武器は西洋化させるべし」と機関銃などの西洋最新兵器を早くから取り入れ、自藩の富国強兵を促進させます。時代は倒幕派と佐幕派に分かれる中、河井が目指したのはスイスのような、永世中立国にすること。それを実現させるために河井は奔走しますが、時代の流れには敵わず、官軍と戦うことになってしまいます。河井によって作り上げられた長岡藩は強く、戊辰戦争で最大の激戦地とまでいわれるほど、この戦いは本当に凄まじかったようです。それにしても、この本は本当に面白かった!これを読むまで河井継之助を知りませんでしたが、この人の人生は本当に「あっぱれ!」と言うべきものです。武士の魂を失わず、日本(長岡藩)の将来を見据えた志は素晴らしかった!人として男として最高です。これは、絶対読むべきです。

山あり谷ありの人生とはまさにこのこと

一方、「歳月」は肥前(佐賀)藩士の江藤新平の話です。倒幕派ながらも、日和見的な肥前藩を卑屈に思っている江藤は、長州と薩摩中心の明治政府を打倒し、肥前藩中心の政府を作ろうと企てます。明治政府の官僚時代には司法省のヘッドとして持ち前の頭の良さを生かし、井上馨や山県有朋の汚職を弾劾しようとします。中でも板垣退助や西郷隆盛らと共に征韓論を戦わせていた中盤が彼の絶頂期でとても面白く、この本のクライマックスといっても過言ではありません。そして最終的な敵は大久保利通。悲しいかな、軍配は大久保に上がり、江藤は佐賀へと落ちていきます。ここで西郷隆盛や板垣退助らと組んで明治政府を倒そうとしますが・・・。政略では一枚も二枚も上手の大久保に・・・。思わず「適材適所」という言葉が頭をよぎりました。それにしても、わずか7年間でここまで人生の山と谷を経験した人が、一体何人いるでしょうか。まさに波瀾万丈の人生とも言えるでしょう。しかし、「たられば」になってしまいますが、江藤新平がそのまま司法省でその敏腕を振り続けていたら、今の日本も違ったものになっていたかもしれませんね。





朝倉恭介vs川瀬雅彦シリーズ

17 06 2011

全6冊からなる、楡周平の代表作ともいうべきシリーズ本。初めて読んだのは、第4弾にあたる「クラッシュ」。図書館をふらついていた時に本書の裏面に記載されていたあらすじを読んで、面白そうだと思い借りてみました。天才プログラマーによって乗っ取られてしまった最新鋭機のプログラム。ジャーナリスト川瀬雅彦が、地球規模のサーバーテロに立ち向かいます。ネット社会の現在における永遠のテーマとも言うべきネットウイルスを題材にしていた本書は、手口が具体的に巧妙に描かれていて、物語にかなり惹き込まれていきました。同時に、そのリアリティさに恐怖も感じました。久々に「面白い!」と思えたハードボイルド系だったので、全編全部読んでみようと思いました。

第1弾の「Cの福音」は、悪のヒーロー朝倉恭介がマフィアの大物と組み、コンピュータ・ネットワークを駆使して作り上げたコカイン密輸システムの話。日本の関税法の盲点をついた完全犯罪で、マフィアのボスにも一目も二目も置かれていきます。筆者のデビュー作らしいのですが、犯罪方法を細部まで描きながらも、前半部の単調さは少し退屈でした。特に、一つ一つの動作に形容詞をつけすぎて、ちょっとしつこい感じを受けました。内容はそこそこ面白かったのですが、この第1弾を始めに読んだとしたら、「んー、もういいかな。」という気分になってしまったでしょう。

第2弾は、報道カメラマンの川瀬雅彦が主人公の「クーデター」。怪しい宗教集団が日本を未曾有の危機にさらしていきます。サリン事件を起こした某宗教団体を彷彿とさせ、「日本は平和」という国民意識が高い日本へ警鐘を鳴らしたともいうべき一冊。テロ集団の計画は緻密で、本のかなりの部分を割いていて面白かったのですが、あまりにもあっけない結末がちょっと物足りなかったです。ただ、特に戦闘技術を持っていない主人公が、戦場報道の経験を便りにテロ集団に立ち向かう姿は、何か現実感があってドキドキさせられましたし、第1弾よりずっと面白かったです。

第3弾「猛禽の宴」は、再び朝倉恭介が主人公。今回はアメリカが舞台で、朝倉恭介のパートナーだったマフィアのボスが襲撃され、その後釜争いを中心としたマフィアの勢力抗争です。そんな中、ある人物が恭介の行っている密輸システムに目をつけ、やがて決着の時を迎えることに。まさに手に汗握る、ゴッドファーザーの世界で、これぞハードボイルドという印象を受けました。マフィアの話好きにはたまらない本だと思います。

冒頭に紹介した第4弾を経て、第5弾は朝倉恭介が主人公の「ターゲット」。悪のヒーローがCIAにリクルートされ、北朝鮮が企む恐るべき未知の生物兵器に立ち向かう本書は、かなりオススメです。全シリーズの中で一番面白かったかも。悪のヒーローがCIAの特殊訓練を受けたことにより、大幅パワーアップ。肉体的には去ることながら、身近にあるもので殺傷能力の高い武器を作成するなど、恐るべき男になってしまいます。北朝鮮のターゲットはアメリカながらも、舞台は在日米軍基地で、日本に潜伏するテロリストをCIAらしいやり口で撃滅していく展開は、ハリウッド映画並みに臨場感たっぷり。映画化してもかなりウケると思います。

そしてシリーズ最終作となる第6弾は、初めて朝倉恭介と川瀬雅彦が対峙し、そして最期を迎えることとなる「朝倉恭介」。恭介が完璧に作り上げたコカイン密輸の完璧なシステムが、ついに白日の元に。警察から追われ、CIAが暗殺を企てる中、川瀬雅彦が恭介に接触。悪のヒーローとジャーナリスト、生き残るのはどちらか?恐るべき猛獣と化した朝倉に一介の人間である川瀬がどう立ち向かうのか。アクション性満載で、シリーズの有終の美を飾るにふさわしいものに仕上がってます。

こうして全シリーズ読破しましたが、一作目を除いてかなりレベルの高いものでした。ただ、一作目はデビュー作らしいですから、それを考えると一作目もディテールを細部まで描いていましたし、楡周平氏の本は面白いと思います。他の作品もぜひ読みたいと思います。

第1弾「Cの福音」

第2弾「クーデター」

第3弾「猛禽の宴」

第4弾「クラッシュ」

第5弾「ターゲット」

第6弾「朝倉恭介」





分水嶺

13 08 2010

「忠臣蔵」を読んでから森村誠一氏に興味を持ち、いくつか彼の歴史本を読んでいましたが、彼はもともとアルピニストで、山岳推理小説が有名との情報を得たので、早速その山岳推理小説のひとつ「分水嶺」を読みました。物語は2人の若い登山仲間が、八ヶ岳に学生最後の山登りをすることから始まります。この時一人(大西)が落下してしまい、もう一人(秋田)が彼を救出するためにとった行動は、足場のない現状の位置で踏ん張ったのでは二人とも落下してしまうと思い、なんと分水嶺を挟んで逆側の谷に自らの身を投げたのでした。しかし、これにより分水嶺を支点にした天秤状態になって、二人とも助かったのです。その後二人とも社会人になったのですが、秋田は医者、大西は化学兵器の開発へと、全く逆の道へ進みました。で、この本は山岳のことは本題ではなく、戦争批判がメインテーマになっていました。ベトナム戦争特需の恩恵を「ナパーム弾」で受けた大西の会社は、彼に「毒ガス」の開発を命じます。戦争を目の当たりにしていない大西は、会社からの期待に応えて出世するために研究に没頭。一方、医者として働く秋田は数人の精神に異常を来した患者に出会い、それが全員大西の会社の従業員だと知り、「毒ガス」の開発・生産を何とか阻止しようと奔走するのです。しかし、二人の気持ちはもはや通い合うことはなかったのです。そう、分水嶺のように。

物語の所々で、秋田に残された時間はあまりないということが触れられていましたが、ストーリーの後半でその理由が明らかに。なんと、彼はヒロシマの被爆者だったのです。原爆投下時、落下地点から2キロの位置にいた秋田は、多量の放射能を吸い込み、いつ発病してもおかしくない体になってしまったのです。また、両親とも原爆が原因で死。そんなことから、彼は戦争を忌み嫌っていたのですが、戦争から産まれるものは「悲劇」以外のなにものでもないと、改めて考えさせられました。最後に秋田がとった行動もとても残酷で胸が締め付けられる思いでいっぱいになりました。でも、非常にいい本だと思います。タイトルも素晴らしい!タイトルと内容がしっかりとリンクされていましたし、アルピニストならではのタイトルだなと感嘆しました。森村誠一氏の他の山岳小説も是非読んでみたいです。

分水嶺とは、太平洋側と日本海側へ流れる水の境界ラインのこと





ワシントン封印工作

15 06 2010

日米開戦前。ワシントンD.Cにて戦争を回避しようと奔走する日本大使館のメンバー。その努力が報われず、結局戦争へ突入してしまう訳ですが、他のメンバーが帰国する中、約20年間姿を消していた事実があったそうです。そんな冒頭説明を読んで、この手の話が好きな自分は、自ずと物語の中へ引き込まれていきました。開戦前の日米交渉を舞台にした小説を読んだ事がなかったので、非常に興味もありましたし。ハルノートで有名なコーデル・ハルなど史実の人物と架空の人物が上手い具合に絡み合っており、とても面白かったです。ただ、「女スパイ」というのはいいと思うのですが、主体となるのが「三角関係」というのが少しいただけなかった気がします。何か短絡的というか、薄っぺらく感じてしまうというか、この手の話に「恋愛」は微妙かなと。それなら、二重スパイを主体にして、「ヤツはどちらの味方なのか」という感じの方が、より緊迫感があって面白かったのではないでしょうか。まあ、この時代のアメリカにいた日本人達の奮闘ぶりを知る事ができましたし、全体的には良かったと思います。この本は開戦前の日米を描いた物語ですが、第二次世界大戦末期の日米(瀕死の日本を救うべく話)を描いた第二次大戦秘話3部作の完結編「ストックホルムの密使」も読んでみたいです。

この時期の小説を読んでみたかったのです。





ゼロの焦点

3 06 2010

以前読んだ「点と線」と同様、映画化もされた松本清張の代表作ですね。禎子は、憲一と見合い結婚をしたのですが、金沢に出張へ行ったまま行方が知れなくなってしまいます。そして、禎子は憲一の会社の同僚である本多に協力してもらいながら、夫の行方を追っていきますが、その過程で夫の隠された生活が明らかになっていくのです。事件の背景には戦後間もない時期に米兵相手の売春女性(パンパン)の存在があり、彼女らがその過去を隠蔽しようと姿もあり、かなり古い推理小説だなあと感じました。また、能登半島の崖がこの小説のメイン舞台(?)になる訳ですが、小説全体を通して非常に暗い印象を受けました。何か独特の哀愁が漂っていました。TVや映画で何度も放映されている名作ですが、自分的にはこの暗さと古臭さはあまり肌に合わないなあ。

この哀愁感が松本清張なのでしょうか。





幕末

27 05 2010

先日の龍馬伝で、佐藤健演じる「岡田以蔵」が原田泰造演じる「近藤勇」率いる新撰組に襲われていましたね。岡田以蔵も「人斬り」と異名されていましたが、この時代は人斬りや暗殺が流行していました。坂本龍馬も志半ばにして暗殺されてしまいましたし。そんな幕末の暗殺劇を描いたのが司馬遼太郎の「幕末」。暗殺は嫌いという筆者が、あえて「暗殺」という視点から幕末を描いています。幕末における12の暗殺事件。「暗殺からは何ももたらされない」と語る筆者が、唯一歴史的遺産になったと言わしめた「桜田門外の変」から、鳥羽伏見の戦い後の田中顕助を記した「最後の攘夷志士」まで、多くの血が流れた激動の時代を、通常の幕末小説とは異なる視点で書いていたので、新鮮な感じがしてとても面白かったです。「逃げの小五郎」と言われた桂小五郎の一面や、井上馨と伊藤博文のエピソードなど、今まであまりお目にかかっていなかった事柄が多かったので、勉強にもなりました。井上馨が「どこでも用を足せた」というのには、かなり驚かされました。イギリス公使館放火の際にも、放火の現場で●●してきたそうです。

それにしても、この時代の若者はエネルギッシュだったんだなあとつくづく感じ入りました。あと、何でもそうだと思いますが、特にこの「幕末」という時代には、いろんな角度から見る面白さが満載されていると感じました。司馬遼太郎作品にはたくさんの幕末小説があるので、他の著書も読んでいきたいと思います。

幕末という、わずかな期間に一体どれほどの人が暗殺されたのでしょうか・・・。





海賊船幽霊丸

26 05 2010

笹沢左保の著書ですが、完成前に著者が他界してしまったため、最終章を森村誠一が補筆。時は関ヶ原の合戦から9年後。西軍に加担して敗れた伊予の来島水軍の物語です。この頃徳川政権は、キリスト教の布教から政権が崩れることを恐れ始め、だんだんと貿易船の取り締まりが厳しくなってきていました。そして、来島水軍が属する主家は国替えを命じられ、海とは無縁の場所へ行く事が決定。そんな中、瀬戸内の幽霊島で製造中の軍船が発見されました。恐らく秀吉政権下で朝鮮出兵のため造られていた物と思われるその船を、来島水軍の残党が完成させ、日本出国を決意。一度出たら日本には二度と戻れないが、「水軍は海から離れたら死んだも同じ」との思いが強く、双生児2人を頭に、日本を後にします。その途中で徳川方の軍船と交戦(自分らを止めようとした相手に一方的な攻撃をして撃破)。その後の舞台は主にフィリピンへと移り、当時「無敵艦隊」と言われていたスペインの軍船を相手にすることになります。史実を元にした物語なのでとても興味深く読めたのですが、笹沢左保の手法なのでしょうか、章が始まるごとに幽霊船や主人公達の同じ説明が2ページほどあるのがウザかった。皮肉にも森村氏が執筆した最終章は、そんな説明はなく、読んでいて一番面白かったです。森村氏が最後の解説を書いていたのですが、元々ホテルマンだった同氏が作家になるきっかけになったのが、笹沢氏だったそうです。そんな笹沢左保の著書を今回初めて読んだ訳ですが、ちょっと自分には合わないかも。他の作品は違うのかな。でも、内容は面白かったです。ダバオ地方で日本人が人気なことや産業(特にマニラ麻)が発達に日本人が貢献したことのルーツがここにありました。知らざれる真実を読んだ気がして、とても嬉しかったです。

この本が完成したお陰で、彼の著書は全380冊になったとか。・・・凄い





鷲と虎

24 05 2010

佐々木譲の戦争冒険小説。舞台背景は、1937年7月に起こった盧溝橋事件をきっかけに突入した日中戦争。イケイケの日本陸軍の陰謀により、上海、南京、漢口、重慶と、中国全土に戦火が広がっていきます。当初は早期決着を予想していましたが、中国に同情的な国々が支援や援軍を送るようになり、やがて戦争は泥沼化していきます。そんな小説での主役は2人。1人は帝国海軍航空隊の麻生哲郎。そしてもう一人は、アメリカからやってきた中国の義勇軍であるデニス・ワイルド。ある事件をきっかけに、デニスと麻生はお互いを意識するようになり、やがて2人は一機打ちをすることに。まだ飛行機の性能が高くなく、パイロットの腕によって戦闘が左右されていた時期。機種も九六艦戦やホークⅢなど、ゼロ戦以前のもの。お互いが名乗りを挙げて戦った時代はすでに過ぎ去った中、お互いの部隊が了承して2人で決着をつける姿は、カッコいいと言うより、むしろ長閑な雰囲気を感じました。その後の太平洋戦争での戦い方を考えると、あまりにも非現実的。ただ、内容はとても面白かったです。クライマックスが一機打ちであろうことは早々と予想できたのでハラハラドキドキしながら読む事はなかったですが、史実とフィクションを織り交ぜながら展開する物語は、読者を飽きさせない面白さがあって、いつの間にか本に惹き込まれている自分がいました。最後は、これも何となく予想していた通り、新型戦闘機が登場してきて、もはや自分は過去の人間だと認識して終わりますが、とても満足できた一冊でした。

機体に虎ペイントしたデニスと鷲部隊の麻生との戦いです。





点と線

18 05 2010

松本清張の名作。まだ読んだ事がなったので、手に取ってみました。無理心中と見せかけた巧妙な殺人事件を追う三原警部補。犯人の予想は序盤でつく中、その前に立ちはだかる巨大なアリバイ。時刻表を駆使した九州と北海道を結ぶ強靭な線。さらに人の先入観を利用した巧妙なトリック。この著書はかなり古いものなので、これが出た当時にはとても話題になったのが良く分かります。でも、今読んでみると何となくトリックの予想が着きました。飛行機の利用、心中と見せかけた仕掛け、偽名を使った工作・・・。恐らく松本清張に影響された作家も多いことなのでしょう、この手の本は結構読んでいたので、新鮮味はありませんでした。もっと早い時期に読みたかったです。ただ、構成や内容はとても面白かったです。今まで松本清張の本はそんなに読んだ事がなかったのですが、これを機会に他の著書も読んでみたいと思います。

一度読んでみたかった本でした。