分水嶺

13 08 2010

「忠臣蔵」を読んでから森村誠一氏に興味を持ち、いくつか彼の歴史本を読んでいましたが、彼はもともとアルピニストで、山岳推理小説が有名との情報を得たので、早速その山岳推理小説のひとつ「分水嶺」を読みました。物語は2人の若い登山仲間が、八ヶ岳に学生最後の山登りをすることから始まります。この時一人(大西)が落下してしまい、もう一人(秋田)が彼を救出するためにとった行動は、足場のない現状の位置で踏ん張ったのでは二人とも落下してしまうと思い、なんと分水嶺を挟んで逆側の谷に自らの身を投げたのでした。しかし、これにより分水嶺を支点にした天秤状態になって、二人とも助かったのです。その後二人とも社会人になったのですが、秋田は医者、大西は化学兵器の開発へと、全く逆の道へ進みました。で、この本は山岳のことは本題ではなく、戦争批判がメインテーマになっていました。ベトナム戦争特需の恩恵を「ナパーム弾」で受けた大西の会社は、彼に「毒ガス」の開発を命じます。戦争を目の当たりにしていない大西は、会社からの期待に応えて出世するために研究に没頭。一方、医者として働く秋田は数人の精神に異常を来した患者に出会い、それが全員大西の会社の従業員だと知り、「毒ガス」の開発・生産を何とか阻止しようと奔走するのです。しかし、二人の気持ちはもはや通い合うことはなかったのです。そう、分水嶺のように。

物語の所々で、秋田に残された時間はあまりないということが触れられていましたが、ストーリーの後半でその理由が明らかに。なんと、彼はヒロシマの被爆者だったのです。原爆投下時、落下地点から2キロの位置にいた秋田は、多量の放射能を吸い込み、いつ発病してもおかしくない体になってしまったのです。また、両親とも原爆が原因で死。そんなことから、彼は戦争を忌み嫌っていたのですが、戦争から産まれるものは「悲劇」以外のなにものでもないと、改めて考えさせられました。最後に秋田がとった行動もとても残酷で胸が締め付けられる思いでいっぱいになりました。でも、非常にいい本だと思います。タイトルも素晴らしい!タイトルと内容がしっかりとリンクされていましたし、アルピニストならではのタイトルだなと感嘆しました。森村誠一氏の他の山岳小説も是非読んでみたいです。

分水嶺とは、太平洋側と日本海側へ流れる水の境界ラインのこと

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